これからご紹介するAさんの家族のことは、テレビで放映されました。

そして、私の著書数冊にご紹介しました。また、講演でもよくこのAさんのことをお話しします。

これから書くことはわたしにとって、生涯忘れらることのできない感動のできごとでした。

以下の内容で書きます。

  • テレビ局からAさんの家の様子の取材メモが私に届く
  • Aさんの家に撮影に伺う→家の様子
  • Aさんにアドバイスをする
  • 二週間後
  • なぜ、テーブルをきれいにしただげで?

H15年ーー

〇〇テレビ局の番組ディレクターから、私宛にAさん家族を取材したときの取材メモと家の中の写真が送られてきました。

父親(39歳) 母親A(39歳)、長女(11歳 小学6年生 長男(9歳、小学4年生) 次男(7歳、小学2年生)

<ディレクターの手紙より抜粋>

母親に対して、上の二人の異常な反抗的な態度が気になった。

特に長男・〇君の眉間にはつねにしわがより、何もかも気に食わない様子。しかし、さらに気になったのは、母親だった。外見はものすごくきれいな一軒家。しかし、玄関を開けると、ランドセルが3つブン投げてあり、中は物が散らかり放題で、まったく整理されていない。

その奥では子どもたちが夕食をとっていた。
「こんばんわ」といっても挨拶はかえってこない。テレビをみながらもくもくと食べている。しかし、長女はキッチンの床に座り込み、食事をしていた。 「いつもあそこで食べているんですか?」との問いに、なんの恥じらいもなく「あそこが一番落ち着くみたいなんです」と母親。しかもその食事は、洗い物が多くなるのがイヤだから、カレーなどの一皿ものが多いとか。それでも、洗い物がメチャメチャたまっているキッチン。

鍋や食材が隙間なく詰め込まれ、ものすごい汚い冷蔵庫。夜でも洗濯物は取り込まれていない。それでも母親は「私の言うことを全くきかないんです」、父親は子どものことは私にまかせっきりで、あの子たちをどうにかして下さいと頼んできた。

わたしはAさんのアドバイスをすることになりました。

 

撮影の日。12月半ばの寒い日でした。

わたしはAさんの家の玄関のチャイムを鳴らしました。カメラはわたしの後ろにいます。玄関のドアが開きました。ニコニコ顔のAさんの顔と対面して「こんにちわ」とおたがいにあいさつを交わしました。カメラはAさんをアップします。

わたしは玄関に入ったとたんに、よろけてしまったのです。足の踏み場がありません。子どもたちのクツがゴロゴロごった返って、そこには、ジャガイモなども転がっていました。カメラはもう一度やり直しです。

玄関に入ると、まっすぐ目の前は階段があり、左はリビングルールがありました。わたしは左のリビングルームをみて、そして横にあるキッチンを見ました。冷蔵庫は冷凍の扉が半開きで、アイスや何かが溶けて固まり、扉が閉まらない状態でした。整理術のことでいろんなお宅を訪問しましたが、これほど、ひどい状態をみたのははじめてでした。

次は、階段を上がって二階に向かいました。子どもたちの勉強部屋と、寝室です。物のジャングルです。

家の中を見て回り、わたしはふたつのことを発見しました。

 

1つ目は玄関に入ると目の前に階段があります。そこに、飾り台がありました。その飾り台に、大きなかぼちゃが置いてありました。

2つ目は子どもの勉強机に、スーパーのチラシが散乱していました。

ディレクターがわたしにたずねました。

カメラ撮りをするために、「どこをどうしたら、この母親とこの家族は改善されるのか・・・・」といった意味です。わたしは母親の行動を一週間みたいので時間簿をつけてもらうことにしました。(Aさんの時間簿を見たい方は本館 jikanbo.netの時間簿7をみてください)

・五人の家族がバラバラです
・朝食もバラバラです
・登校時間 三人がバラバラに登校しています。

ふつう小学生だと、起床時間は多少の違いはあっても、きょうだいの「登校」が別々ということはほとんどありません。「起床時間」と「登校時間」がバラバラなのは、子どもたちの好き勝手な行動、自由奔放とも取れます。

しかし、Aさんは、子どもたちに「起きなさい」「食べなさい」「学校に行く時間よ」と声をかけているのに、子どもたちが言うことを聞かないので、それでなんとかしたいと思って、テレビの番組に応募したはずです。

 

「私の言うことを全くきかないんです、どうしたらいいでしょう」と母親。
わたしは言いました。
「リビングのテーブルをきれいにしてください」
「え?・・・」

母親はうれしそうに「それだったらできます!」と言いました。

このときの母親の心境をだいぶ後になって知ったことですが、子どもの学習番組なので、「しつけや教育」に関係するようなことを言われると思ったそうですが、それが「なんで、テーブルの上?」と不思議だったそうです。

なんだ、そんな簡単なことだったのかと思って「それだったらできます!」と答えたとのことです。

ディレクターも意外なわたしのアドバイスに驚いたようです。 こんなにひどい家の中が、テーブルをきれいにするだけでどう変わるんですか? あの子供たちが本当に変わるんですか?

もうひとつ、わたしがテーブルに仕掛けたことがあります。

おにぎりを置くこと。
わたしはAさんにいいました。

「テーブルの上をきれいにしておにぎりを置いてください」

Aさんは「それだったらできます!」と返事しました。
ではAさんの家のテーブルがどのような状態だったのか、かんたんに触れておきます。

 

Aさんの家の様子をもう少しくわしく説明します。
Aさんの家は新築したばかりのようでした。リビングルールは大きなガラス戸で中庭に面していました。12月半ばというのに、暖かな日が差し込んでいました。庭というより畑状態といった方がいいでしょう、自分で植えたのでしょうか、ナスの木が枯れて、ほとんど土の状態でした。

その畑に、野菜くずやみかんの皮が散らばっていました。放り投げた状態。きっと畑の肥料にいいと思って、調理に使う野菜のくずをゴミに出さないでこのよう畑にまいているのでしょう。 庭の隅っこに、きっと、秋にはきれいに咲いたコスモスが枯れて、菊の花たちも枯れて、庭がいっそうみすぼらしく見えました。

リビングのテーブルでゆったり庭を眺めるように設計されていました。テーブルは五人家族とあって、大きくて、リビングルームの面積をかなり占めていました。けれども、テーブルの上は、カップひとつ置けないほど、物がいっぱいでした。

椅子は物がてんこ盛りになっていて、座れる椅子はなかったような気がします。本来なら椅子はテーブルを囲って置かれているのに、どの椅子も物置き台になって、椅子がいくつあるのかもわからない状態でした。ピンク色のシクラメンの花が、古新聞の間に埋もれていました。

本来なら飾り台は、何か飾り物を置く台です。時計や花の鉢、陶器、人形・・・・・などを置くものだと思いますが、 なぜ、Aさんはかぼちゃを置いたのでしょうか。 Aさんの実家は農業をして、近くだそうです。ご両親がたまに野菜をもってAさんのお宅にやってくるそうです。きっと、そのかぼちやもそうなのでしよう。

ふつうはかぼちゃは、キッチンやとりあえずテーブルの上に置くと思いますが。Aさんが飾り台の上に置いたのは、かぼちゃを置く場所がなかったのだと思います。ほんとうは、飾り台にきれいな物を置こうと思って、何も置かないで開けていたはずです。(飾り台の上には、小物をちょこちょこ置いてありましたが)。

 

つまり、飾り台は、大切にとって置いた空間=聖域です。

 

先ほど、リグングのテーブルの説明のことろで、シクラメンが古新聞の間に埋めれていましたと言いましたが、実は、このシクラメンの鉢を飾り台の上に置きたかったのだと思います。けれども、かぼちゃが置いてあったのでシクラメンをテーブルの隅っこに置いたのでしょう。でも、古新聞を重ねていくうちに、どんどん、シクラメンが古新聞に埋もれていったのでしよう。

 

次は、子どもの勉強机の上に、新聞のチラシがごそっと置いてあったことについてですが、 わたしはカメラで撮影しているときに、「これ?」と指差しました。Aさんもすぐわかったようで、笑いました。 そうです。

Aさんは新聞を読むのに、ふつうはリビングのテーブルでゆったり畑をみながら新聞を読みますが、テーブルは物がいっぱいで、そして椅子が物でてんこ盛りになっているので座る場所がなく、子どもが学校へ行っている間に勉強机で新聞を読んでいる・・・わたしの推測は当たっていました。

こうした状況の中、テーブルをきれいにするだけで、Aさんはどのように変わり、子どもたちはどのように変わったのか、ご紹介してまいります。

「テーブルをきれいにする」ゼロの状態にして、 そこに、おにぎりを置く。それだけです。

 

二週間後

「すごい変わりようです。先生もびっくりすると思うんで、見ていただきたいんです。車を回しますから、すぐ見にきてください」。 番組のディレクターから興奮の電話がかかってきました。

改善後のお宅訪問はわたしの仕事に含まれていませんでしたが、ディレクターはよほど、わたしに見てほしかったのでしょう。わたしはおどる気持ちでタクシーに乗って、Aさんのお宅に向かいました。わたしの自宅からAさんの家まで、タクシーの料金が5000円くらいの距離です。

Aさんの家に入ると、まっさきにシクラメンの花が飛び込んできました。あの新聞に埋めもれていたピンクのシクラメンが、あのかぼちゃが置いてあった飾り台に置いてありました。 リビングテーブルの上には、大きなおにぎりが6個置いてありました。

二階の勉強机の上は、勉強の道具が少しあるだけでした。 家の中を見て回る間、静かというより、みんな緊張していました。テレビの番組として成功するのか、すべてがこの結果にかかっていました。どのような作品に仕上がるか、改善後が見せ場です。その改善後は予想もしなかったほど変わっていました。

 

わたしとAさんは向き合いました。

「お母さん、変わらなくていいって、ぼくたちが変わるからって」 Aさんの目に涙があふれていました。 「よく、がんばったね」 わたしはAさんの手をとりました、わたしも涙があふれてきました。ディレクターも涙ぐみながら、わたしとAさんの手をとりあった涙のシーンを撮ろうとして、カメラを近づけてきました。

あのときにつぶやいたAさんのことばを今もはっきり覚えています。

「なんだか気がぬけたみたい・・・・、次に何をしようかな・・・」

Aさんのことをきっかけに、わたしはテーブルをきれいにするだけで~の本を数冊出すことができました。

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その一冊が「テーブルひとつから始める「お部屋スッキリの法則」(大和出版)。本の担当の編集者がAさんに直接会って、どうして二週間で家の中をスッキリできたのか取材することになりました。

三年後にAさんを再び取材しました。子どもが言うことをきかない(2)